THEORY 家づくり論 

ホーム > 家づくり論

壁付加断熱・トリプルガラスが
標準仕様の高断熱住宅専門店
ハンズホームの家づくり論

はじめに・・・
私のこれまで(自己紹介)

BACK TO TOP

大学は、室蘭工業大学で鎌田研究室

皆さんこんにちは、ハンズホーム社長の中山と申します。ホームページをご覧いただきありがとうございます。

はじめに自己紹介を。私は1974年に東京で生まれました。父の転勤で小学校から高校までを山形市で過ごし、北海道の室蘭工業大学工学部建築学科に進学し、鎌田研究室(大学院)で学びました。鎌田研究室とは、高断熱住宅の研究開発で知られる鎌田紀彦先生です。

大学院修了後に、サッシメーカーのYKK APに就職しました。何年か後には住宅建築の道に進むことを予定していましたが、家業を継ぐわけでもないので、いろいろな経験を積んでからでも遅くないと判断し選んだ会社です。YKK APでは、富山県富山市の本社工場と宮城県大崎市の東北工場で設計グループに所属し、6年勤務したのちに退職。1998年に多賀城市に本社がある住宅会社に入って住宅建築の道をスタートしました。

ここも修業が目的で、設計施工、積算、営業、現場管理など、住宅建築のすべてに携われるよう小規模な会社を知人に紹介してもらって入社したのですが、その会社の社長が入社2年後に病気で急逝され、急遽私が後継することになりました。周囲の人と相談し、結局その会社を解散して私が新会社を興し、お客様のメンテナンスを引き受けることになりました。それがハンズホーム(株)です。

同業者の仕事をしながら年間10棟の供給体制を構築

同業者の仕事をしながら年間10棟の


供給体制を構築

組織ができているからとはいえ、2年という期間は住宅業界で一本立ちするには短すぎます。それに、それまでのお客様のアフターフォローには責任がありますから、きちっとしなければなりません。新会社では新しい仕事よりも、そちらがメインで対応に追われました。

やがて、北関東に本社がある住宅会社から提携を求められ、受けることにしました。在来木造住宅で無垢材を多用する自然派系の家をつくる会社で、木材の使い方や壁材との取り合わせ、伝統技術による仕上げなど、多くのことを学びました。またこの間は、設計事務所から施工を依頼されることも多く、年間10棟くらいの建築を手がける期間が10年ほど続きました。

設計事務所から施工を依頼された理由は、高断熱住宅です。提携会社の仕事をしている間、年に1~2戸は自社受けの住宅があり、それらはすべて高断熱住宅で建てていました。それを知った設計事務所が、知人を介して依頼してきたのです。今思うと、こうして他社さんの仕事を通して、年間10棟を建てるだけの施工力(供給体制)ができたことは大きな成果でした。今現在の大きな力になっています。

お客様と直に接することができないジレンマ

お客様と直に接することができない


ジレンマ

仕事は忙しかったものの、それでよしとは思いませんでした。同業他社の仕事は、人や会社を挟んで行いますから、お客様と直に接する機会がありません。私としては、より高い性能の高断熱住宅だけを建築したいという思いがありましたが、直接提案することもできません。高断熱住宅がどんどん進歩していることを知っていたので「これではいけない」という思いを常に抱いていました。

また自社請けではない仕事は、お客様と本来あるべき関係を築くことができません。プランニングに始まり、引き渡しをした後もお客様とは健全な形で長くおつき合いをさせていただきたいと思っています。本当に快適で省エネな暮らしができているか、何か不具合が発生していないか…。住宅は一過性の消費商品ではありませんから、長いアフターフォローが大事ですし、必要です。お客様と直に接することができない状況は、大きなジレンマでした。

自社請け100%の会社へ方針転換

「お客様と直に接して家づくりをしなければ」という思いは日に日に強まり、自社請け100%をめざすという方針転換の決断をしました。2020年のことです。方針転換に踏み切った大きなきっかけは「南東北の高断熱住宅」と「この家にしてよかった」という2冊の本です。どちらも新木造住宅技術研究協議会(以下、新住協)から発行された書籍です。

編集された会澤健二氏(現新住協顧問)の取材に同行する機会が何回かあり、さまざまな話をする中で「高断熱住宅は目覚ましい進歩をしているのだから、お客様に直に接して本当にいい家を提案して提供すべきで、それが今の時代の住宅会社の使命だ」という思いに至ったのです。

これまでに高断熱住宅のセミナーや構造・完成見学会を開催してきましたが、その背景には新住協の会澤氏との出会いがあります。氏の著書「この家にしてよかった」には、家づくりの前にぜひ読んでいただきたい内容が書かれています。1号~4号まで出ていますが、わが社は3号に掲載されています。ユーザーの皆様には高断熱住宅の真実を知っていただき、将来にわたって省エネで快適な暮らしにつながる本当に高性能な住宅を建てて欲しいと思っています。

超高断熱住宅専門の住宅会社
ハンズホームの住宅概要

BACK TO TOP

  • 高断熱住宅の基本4型

    皆さんは、住宅の断熱に基本となる4つの型があるのをご存じでしょうか。外断熱や充填断熱といった構造的なものではありません。断熱する部位による型です。家の上部は屋根か天井、下部は床か基礎、壁は1種しかありませんから、これらを組み合わせると4つの型になるのです(図1)

  • ハンズホームは、屋根断熱―基礎断熱を基本としています(図2)が、天井断熱や床断熱も行います。特にリフォームやリノベーションで高断熱化にする場合は、この4つを組み合わせた技術が必要になります。基本4型の施工技術は、断熱住宅専門の工務店としてしっかりマスターしておかねばなりません。

  • この4つに断熱性能の優劣差はありません。どのパターンを採用しても、ある一定の高いレベルに達します。表1はわが社の直近5戸の断熱型と断熱性能です。各住宅とも基礎断熱は共通です。天井断熱(M邸)でも屋根断熱(H邸他)でも性能(UA値)はほぼ同じレベルであることがわかります。図3でUA値の概念もご覧ください。数値が小さい方が優れていることを示します。

  • わが社の標準仕様は省エネ基準のどの位置か

    わが社の標準仕様は省エネ基準の


    どの位置か

    表2はわが社の標準仕様です。窓は樹脂サッシ+トリプルガラス、壁は付加断熱(210㎜断熱)を標準にしています。改めて表1の直近5戸の断熱性能(UA値)をご覧ください。すべての住宅がUA値0.30以下です。

    数字が小さい方が優れていると前述しましたが、それが国土交通省が定める省エネ基準のどの位置にあるか、図4をご覧いただければわかります。この数値は、省エネ基準の最高ランクである北海道の最北端地域をも上回っています。これがわが社の標準仕様です。

  • 暖房燃費 暖房エネルギー消費量を大幅に削減

    暖房燃費 暖房エネルギー消費量を大幅


    に削減

    住宅が高断熱化すると、どんなことが起こるか。1つは、年間の暖房エネルギーが大幅に減少します。逃げる熱が少なくなるので、当然といえば当然です。表3がその一覧です。年間の暖房費はいずれも2万円台です(室温20℃設定で、一冬全室連続暖房時の計算値)。

    ちなみに、省エネ基準をギリギリ満たす程度の性能(以下、省エネ基準住宅)で建てた住宅と比較すると、70~80%のエネルギー消費削減という計算結果が出ます。高断熱住宅は、まさしく省エネ住宅です。

    次は快適性です。たくさんのエネルギーを消費すると、その分暖房量が増えます。一方で70%削減されれば暖房量も大幅に少なくなります。どちらが心地いいでしょうか。いうまでもなく後者です。快適性も高まるのです。わが社で建てた家に住んだお客様は「本当に家中どこへ行っても暖かいんだ!」と驚いてくださいます。これが真に快適で省エネな高断熱住宅です。

  • 実は知られていないもう一つの利点「非常時にも強い家」

    実は知られていないもう一つの利点


    「非常時にも強い家」

    断熱性能が上がるとなぜ暖房費がかからないのかというと、それは「少しの熱で室温が上がるから」です。断熱性能が高いと、室内への日射や生活の中で発生する熱(以下、生活発生熱)も室内を暖める暖房熱になります。日射熱と生活発生熱によって上昇する室温を「自然温度差」といいます。

    表4の「自然温度差」を見ると、各家とも8℃~9℃あることがわかります。東日本大震災では、暖房が止まって寒さに苦しんだ家がたくさんありました。あのとき、暖房なしでしのげた家もたくさんあったのですが、それらの家の自然温度差は9℃前後でした。住宅性能が高いと、室温はある程度の高さ(外気温+自然温度差)が保たれるので、暖房が使えない非常時でも健康を害するような寒さで苦しむような事態は免れるでしょう。

暖房エネルギー消費量の計算

BACK TO TOP

  • 省エネ住宅の理論

    暖房エネルギーが減少する理論をご紹介しましょう。まず図5をご覧ください。ある晴れた冬の日曜日、外気温は0℃、室内は暖房中で室温は20℃の場面です。

    ストーブで暖房され、室温は全室20℃です。このとき、室内の熱は常に外へ逃げています。逃げる熱の量の大小は、家の断熱性能で決まります。逃げる熱と同量の熱が室内に補給されることで室温は20℃に維持されています。

    そして暖房の熱のもとはストーブだけではありません。晴れているので日射熱も部屋を暖めています。キッチンでの加熱調理や冷蔵庫などの家電製品からも熱が出ています。ですから、20℃に暖房しているこの場面を構成しているのは、「日射熱」「生活発生熱」「暖房熱」の3つになります(図6上段)

    次に、この状態で断熱性能を今の倍に向上させます。すると、逃げる熱は半分になり、熱の構成は図6下段のようになります。生活発生熱と日射取得熱が同じなので、減るのは暖房熱だけです。暖房熱は70→20となり、71.5%削減されました。つまり、約70%の削減です。これが高断熱化による暖房エネルギー削減の理屈です。

  • 省エネ住宅実現のために大事なこと

    断熱性能を向上させること

    日射熱を多く取得すること
    (減らさないこと)

    ※生活発生熱は床面積㎡あたりの定数(4.65W)が定められています。
    ※断熱性能を上げるときには、窓ガラスをトリプルガラス等にするため、日射熱は少なくなりますが理論の基本は変わりません。
  • 熱計算プログラムQPEX

    暖房にかかるエネルギー量は、住宅から逃げる「損失熱」と、日射熱などの「取得熱」を計算して求めます。損失熱は、住宅の断熱性能と建設地の寒さで決まります。取得熱は、建設地の日射量と窓の条件で決まります。

    しかし、住宅は一戸一戸、建築条件が違います。例えば日射熱の取得量は日当たりの良し悪しや窓の方位や大きさなどに左右されますから、個々に計算しなければなりません。また、断熱性能をどれだけ上げたらどれだけ暖房エネルギーが減るのか、そういうことが、設計段階でわからなければ意味がありません。

    暖房エネルギーの計算はいろいろな要因が複合的に関係して簡単ではありません。そこで登場するのが計算プログラムです。わが社では新住協で開発したQPEXという計算プログラムを採用しています(図7【QPEX表紙】)QPEXは建設地の気象データ(日射量や寒さの数値)が入力されていて、住宅の取得熱と損失熱を綿密に計算してくれる優れものです。

  • 実際の建築において省エネ計算はどうなるか

    実際の建築において省エネ計算は


    どうなるか

    2022年1月に完成見学会を開催したМさん邸をQPEX計算した例をご覧ください。表5表6はQPEX計算書の計算結果表の中の抜粋です。

    新築したМさん邸が表5、Мさん邸の住宅性能を省エネ基準レベルに下げたのが表6です。表5表6「←ヘ」の部分をみると、どちらも省エネ基準をクリアしていることがわかります。ただし、暖房燃費はまるで違います。表7のとおり、実際のМ邸は21,570円ですが、表6では94,770円で、実に4倍もの差があり、Mさん邸は表6に対して77%も削減されています。

    このように省エネ基準をクリアしたとしても、断熱仕様の差によって実際は暖房燃費に歴然とした違いがあることがわかります。断熱住宅もピンからキリまである、といわれるのはこういうことです。

  • 熱はどの部位から逃げているのか?断熱性能が低い部位とは

    熱はどの部位から逃げているのか?


    断熱性能が低い部位とは

    次に表5表6「ト→」部【熱損失の合計】をご覧ください。表5では105、表6では246です。これは、この家の室温を1℃上げるときに必要な暖房エネルギーで、単位はワットです。イメージしやすいよう、ワットを「円(お金)」に置き換えてみましょう。そうすると、表5の場合は105円、表6の場合は246円。性能が低い表6は室温を1℃上げるのに、表5の2倍以上のコストがかかることになります。だから暖房費がかさむのです。

    では246円分の熱は、住宅のどの部位からどのくらい逃げているのでしょう。それを表したのが、「ニ ハ ホ」の矢印が指す数字です。「ニ:壁→71」「ハ:開口部→91」「ホ:換気→47」でこの3ヵ所を合計すると209となり、これは全体(246)の85%を占めます。

    要するにこの3ヵ所が断熱の弱い部位=断熱強化が必要ということになります。表8はそれらを一覧とグラフで表したものです。

  • 大幅な改善は何をどう変えて実現したか

    表8を見ると、基礎や天井から逃げる熱の量は、他の3ヵ所よりも少ないことがわかります。住宅性能を向上させるということは、「246」をいかに小さくするかということですから、逃げる熱の量が多い部位、つまり壁(ニ)、開口部(ハ)、換気(ホ)について何らかの形で性能向上を図り、逃げる熱を少なくすればいいわけです。それを表9に整理しました。

    実際のМさん邸のデータを見ると、壁71→31(56%減)、開口部91→43(53%減)、換気47→8(83%減)と熱損失量が減少しています。3点を合計すると246→105で、53%減になっています。

    グラフで見ると、部位別の絶対量がよくわかります。例えば、開口部の性能を20%上げれば、床の熱損失0以上に相当します。開口部の性能を20%上げるのは難しくありませんから、床の断熱にこれ以上お金をかけるよりも、開口部の性能を向上したほうがいいことがわかります。

    皆さん、ここでお気づきになりましたか? 熱損失が53%減(約1/2減)ということは、断熱性能が約2倍になったということです。ところが、暖房エネルギーは表7で示すように77%の減少です。「省エネの理論」図6の下段で「断熱性能が倍になれば、暖房エネルギーは70%削減される」と示しましたが、これでほぼその数字になりました。

性能UPに必要な改善の3つの
重要ポイント

BACK TO TOP

  • ポイント1 <開口部> オール樹脂サッシ+トリプルガラスの採用

    ポイント1 <開口部>


    オール樹脂サッシ+


    トリプルガラスの採用

    開口部は断熱性能が最も弱い部分です。アルミ樹脂の複合サッシにペアガラスという断熱サッシでも、壁の1/10程度の性能しかしかありませんでした。しかし、近年の新商品の開発は目覚ましいものがあります。高性能ペアガラスが開発され、サッシ本体も複合から樹脂100%となり、トリプルガラスも発売されています(図8)

    トリプルガラスを採用すると、開口部の性能はそれまでの断熱サッシと比較して2倍以上も性能が向上します。窓は壁面積の20~30%を占めるので、窓の性能が向上すると住宅全体の性能も大幅に改善します。

    ただトリプルガラスを採用すると日射取得熱が減少します。光がガラスを3枚透過するからです。本来は日射熱をより多く取得したいので、断熱性能を優先するか日射取得を優先するか判断に迷うところですが、わが社では断熱性能を優先して全棟トリプルガラスが標準仕様です。

  • ポイント2 <換気> 熱交換型換気システムの採用

    ポイント2 <換気> 


    熱交換型換気システムの採用

    現在は、24時間機械換気が法律で義務付けられています。方式は基本的に2つあります。室内外の空気をそのまま入れ替える第3種換気と、入れ替えるときに空気を交差させて、暖かい空気の熱を回収する熱交換型の第1種換気です。

    室内の暖かい空気をそのまま排出すると熱のロスが大きいので、わが社では熱交換型換気システムを採用しています(図9)。この方式は、室内にダクト(管)を配するので設計上配慮が必要です。また、換気性能を保持するために出入り口のフィルター清掃が定期的に必要です。

  • ポイント3 <付加断熱> 壁の断熱を厚くする

    ポイント3 <付加断熱> 


    壁の断熱を厚くする

    私たちは高断熱住宅に早くから取り組み、断熱性能を高めて日射を確保すると想像以上に暖房エネルギー消費が減る=暖房費が減ることがわかり、性能をより向上させる方法を追求してきました。前述の開口部の改善や熱交換換気の採用もその一つです。これらは新商品が開発されたことで、進化させることができました。

    残るは「断熱」です。天井や床基礎にさらなる断熱を加えるには限度があります。そこで開発されたのが、壁の外側にもう一枚断熱する「付加断熱」でした。壁は外部に接する面積が大きいので、ここに断熱を加えると住宅全体の断熱性能が一挙に高まります。わが社では、付加断熱の技術を習得して全棟標準で採用しています(図10)

    ボード状の断熱材は性能としては多少いいのですが、燃えやすく、燃えると有毒ガスが出る断熱材もあるので、不燃材の高性能グラスウールを採用しています。これを外側に105㎜張ることで今考えられる最高レベルの断熱性能を実現しています。

エアコン1台で暖房!
床下放熱式エアコン暖房の
メリット

BACK TO TOP

  • 暖房は「床下放熱式エアコン暖房」を採用しています。35坪ほどの住宅で、14帖用程度の家庭用エアコン1台を使います。温風を床下に吹き出し、その圧力で室内の1階各所に設けた出口から排出するという仕組みです。温風の出口は、大きな開口部の室内側に多く設けます。コールドドラフト(窓ガラスで冷やされた空気の降下)を抑えるためです(図11)

    この方式は、初期コストが安い、エアコンの性能がいいので電気代も安い、ボイラーのような音が出ない、エアコンの直風が人に当たらないなど、いろいろなメリットがあります。専用の技術が必要ですが、これは工務店側の問題で、お客様の負担になるメンテナンスはごく簡単です。

    そして何よりも大きな魅力は「エアコン1台で暖房できる」という点です。将来、取り替えの時期が来たときもエアコンを1台買い換えればいいのです。機器には必ず寿命がありますから軽装備にしておけば後々が楽です。わが社では、暖房に限らず設備の軽装化をおすすめしています。

建築コストがどれだけ上がるか

BACK TO TOP

  • 「省エネ基準住宅」と「高断熱の超省エネ住宅」のコストの比較

    「省エネ基準住宅」と「高断熱の超省


    エネ住宅」のコストの比較

    高断熱住宅をつくって全室暖房にして、冬を快適に暮らしたい。それを実現するためには何をどうすればいいか、ここまでの説明でおわかりいただけたと思います。そこで一番気になるのは「高断熱化するのにどれだけ費用がかかるか」だと思います。わが社では35坪ほどの広さの家で大体150万円プラスと試算しています。

    高断熱住宅に住むと健康リスクが下がって光熱費や医療費が安くなるので、高断熱化でかかった費用は何年で元が取れる、というような話をする専門家もいるようですが、そうではないと私は思います。

    前出の会澤氏の近著に「200の名言名句名台詞」という本があります(図12)。その中にこんな話が載っています(No.142)。「ちょっと奮発して美味しいものを食べるとき、元を取るって考えますか?幸せ気分を味わうんじゃないですか?」。

    高断熱住宅に決めた方々にお話を聞くと、ほとんどが「元を取るなどという気持ちなど少しもありません」と言います。テレビや冷蔵庫が私たちの生活必需品であるように、一度住んだ人にとって省エネで快適な室内環境は、目に見えない必需品になっていると言えます。

私の主張 脱炭素化の社会に
ふさわしい住宅とは?

BACK TO TOP

  • 大事なのは性能値(UA値)の追求ではなく「暖房エネルギーの計算」

    大事なのは性能値(UA値)の追求では


    なく「暖房エネルギーの計算」

    高断熱住宅を勉強してくるお客様から「ハンズホームの家のUA値は?」というような質問を受けることがあります。国交省関連団体のHEAT20委員会が、G1・G2などというレベルを設定してUA値で断熱性能を指導していることが要因になっているようです。

    間違いではないのですが、本当に大事なことは「暖房エネルギーの計算」だと私は思っています。暖房エネルギーの削減に日射熱の利用は欠かせないので、UA値だけではわからないのが実情です。特に仙台は冬の日射が豊富ですから、この自然エネルギーを活用しない手はありません。

    わが社で全棟の暖房エネルギーを計算している理由はここにあります。省エネルギー住宅をめざせば、UA値は結果として高いレベルになるのです。設計段階でその家の年間暖房エネルギー消費量を計算することが必須と考えています。

  • 太陽光発電とゼロエネルギー住宅

    細かい規定を抜きにして大雑把にいうと、ゼロエネルギーハウスとは、家庭で使うエネルギー以上の電力を太陽光で発電するというものです。極端な言い方をすれば、断熱性能はさほど高くなくとも、発電量が多ければゼロエネルギーハウスになってしまうのです(ある程度の断熱性能は必要ですが…)。

    しかし、これにはおかしな点があります。もし太陽光発電がなければ、断熱性能の低い普通の家になってしまいます。わが社では、太陽光発電を載せる場合も、住宅の断熱性能をできるだけ高めることをおすすめしています。そうすればもし発電パネルの不具合などが起こっても、少なくともしっかり高断熱された省エネ住宅が残るからです。

  • コンパクトな高性能住宅がこれからの家

    私たち家づくりをする者は、将来の社会のことも考えなければなりません。日本は高齢化が進み、すでに人口減少が始まっています。後に続く若い人たちの世代人口が少ないことが、経済に陰りをもたらすと懸念されています。

    そんな中、私は「コンパクトな高性能住宅」をおすすめしています。断熱がしっかりしていれば、コンパクトな家でも広く有効に使えます。コンパクトなら、光熱費は少なくて済みます。高性能なら快適性も高まり、健康にも好影響です。そして、メンテナンスにかかる費用も安く済み、脱炭素化の時代にも合っています。私は、可能なら、ちょっと広めの敷地にコンパクトな超高性能な家が理想だと考えています。

終わりに・・・ 私が感動した
ユーザーの言葉(名言名句より)

BACK TO TOP

  • 終わりに、2021年末に新住協から発行された「200の名言名句名台詞」の中から、私自身が「なるほど!」と思った言葉をいくつか紹介したいと思います、この本で紹介されているのは「ユーザーと設計施工者から生まれた名言名句」で、家づくりに関する示唆に富む名言名句がたくさん掲載されています。

    埼玉の若い主婦の方の話(No.030)です。「夏暑いのも冬寒いのも自然現象だから当たり前。それを家電とか暖房機器や衣服寝具の調整でなんとかしていくのが普通のことだと信じて疑いもしなかった。(中略)家を快適にするためにはこんなインテリアがいいとか、間取りのデザインや最新式のシステムキッチンを導入してとか、欧米の家のような外観がいいとか、オーディオルームやホームシアターなどを備えればそれが快適なのだと、そう考えていたのです。でもこの家に住んでみて、何をもっての快適なのかもわかっていなかったんだと思います」。

    家づくりにのぞむ多くの人が、そう考えているのではないでしょうか。冬の始まり、この家を訪れる人は皆さんが「床暖房ですか?」と聞くそうです。そうではないのですが、そのギャップが現実です。

    また、新潟の方(No.140)は「建てるかどうか迷っているなら、早いうちに建てた方がいい。いい住宅を建てれば、それだけ長くクオリティーの高い生活を送れる。住んでみて本当にそう思う」と言っています。これもいい言葉だと思いました。

    そして広島市の老夫婦(No.002)は、それまでの家とのあまりの快適さの違いに「この家はお宝級です。こんな家になるとは思わなかった」と言っています。

    みんな、わが社が手がけるのと同様の本物の高断熱住宅に住んだ方々の言葉です。私は「『こんな家になるとは思わなかった』ではなく、『こんな家になりますから、そう思っていて期待してください』」と、心の中でお客様に言葉をかけて家づくりに取り組んでいます。皆さん、いい家をつくりましょう。最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

TOP PAGE